ティモボルに学ぶ、最強のループドライブの極意!!

ループドライブと聞くと、通常のドライブ以上にゆっくり、山なりに、また強く回転をかけてボールを飛ばす技術をイメージすると思います。

回転量で相手をミスさせたり、返球を甘くさせて次球を攻める、などの戦術に役立つわけですが、相手が強ければ逆にループドライブを狙われてしまうこともしばしば。よって、卓球のレベルが上がれば上がるほど、ループドライブは質の高いものでなければ、逆に相手につけ込む隙を与えてしまうことになってしまいます。

では、質の高いループドライブはどうすれば打つことができるか。

今回は世界トップクラスの相手にも通用するループドライブを打つ選手、ヨーロッパの貴公子、ティモボル選手のプレーを参考に、質の高いループを打つためのポイントを解説していきます。

“質の高いループドライブ”の定義

・私の見解

①回転量が多い

②低い(ネットスレスレがbest)

③浅い

①は自明ですが、逆に②,③に関しては、間逆の意見を唱える人もいるかもしれません。が、↑のように定義したのには理由があります。

・高くて浅いループドライブ

これは、相手がカウンターを狙いやすい、典型的な「ダメなループドライブ」。

・高くて深いループドライブ

確かにこれも非常に返しづらいループドライブになります。特にループは相手が前陣にいる場合が多いので、これができればミスを誘えそうです。

ですが、深いループドライブは、浅いループに比べて、相手からすると球が自分の方へ勝手に飛んできてくれるので、ループに高さがあって強打は難しくとも、飛んできてくれる球をしっかり待てれば面の角度が合っていれば当てるだけで返球できてしまうので、返球すること自体はそこまで難易度の高い話ではありません。また、高さがある(=ボールの滞空時間が長い)と、相手のレベルが高く素早く台との距離を調整してくる場合、やはりチャンスボール扱いとなってしまいます。そして、なにより100点満点の”高くて深いループドライブ”をするのは非常に難しい。深さを意識しすぎてオーバーミスに繋がったり、オーバーミスを恐れて”高くて浅い”質の低いループドライブが出てしまう危険性もあります。

・低くて深いループドライブ

これも、深いループドライブであるから↑と同様に「球を待てれば返球は容易である」という欠点があります。そして同じく、100点満点の”低くて深いループドライブ”は難しく、高くなって、普通の”持ち上げるドライブ”になってしまう可能性が高いです。

以上のことから、この記事では、最初に述べた条件を満たす、回転量豊富で、低くて浅いループドライブが質&ミスの少なさを考慮して、最強であると考えます。

ループドライブのポイント解説に移る前に、質の高いループを打つために自明であるポイントを先に上げておきます。

・スイングスピードを上げる

・球を薄く捉える

この2点は解説せずとも理解できると思うので、各自で鍛錬して下さい。筋トレ素振りも有効ですし、こちらのWRMの練習動画もタメになると思います。

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ラケットや指を台にぶつけないように注意しながら行ってくださいね。私が高校生の頃、学校でこの”台の上で球を転がして、出たところを打つ”という練習が流行った結果、ラケットが折れたり、指を挟んで怪我をするという事件が起きましたから(笑)

では、ここから実際にポイント解説に入ります。ティモボル選手のループドライブのスローモーション付き動画を貼っておくので、その後の3つのポイントを読みながら何度も見返して下さい。

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①回転をかけるには、腕だけでなく手首もしならせて、ダメ押しで横っ腹も使う

強い回転をかけるにはスイングスピードを速くする必要があるのは自明でしょう。

腕をしならせるのは勿論、手首もラケットヘッドが落ちるように折ってしならせ、さらにラケットを握っている方の脇腹を収縮させ(=上半身を横に倒す)一気に元の状態に戻す、という3つの動作を連動させることで、非常に強い回転をかけることができます。

脇腹の収縮はあまり強く意識しなくても良いですが、意識しなさすぎると腕だけでループドライブを打つクセがついてしまい、威力が減ったり、適切な位置に足を動かすことを怠りがちになってしまうので注意が必要です。

手首を意識的にしならせることは卓球ではサーブ・チキータ以外はほとんど無いですが、ループドライブでは回転量の多さが非常に重要なので、手首もしっかり使う必要があります。「ラケットヘッドを思い切り下げて、思い切り振り上げる」ということを意識してみましょう。

②体の横・体の近くで垂直スイング

回転量・細かなコントロールが求められる技術では、体の近くで打球した方が、スイングの威力をしっかり回転に変換でき、またコントロールもしやすい、というのは、台上技術やサーブ時のことを思い出せば、感覚的に理解できる人も多いと思います。

実際の卓球では、相手の速い球に遅れずに済む&こちらも速い球が送れることから、通常のドライブは体の斜め前辺りで打球します。しかし、ループドライブに関しては、台からギリギリ出るくらいの遅い球を打つうえ、ループ自体も遅い方が通常のドライブとの速度の差が生まれて打ちづらくなるため、なるべく体の近くで打球した方が良いループドライブが打ちやすくなります。

また、浅いループを出すためには、球の前方向へ飛ぶ力をなるべく無くす必要があるので、スイングは斜め上ではなく垂直方向(真上方向)に振った方が良いです。ですので、体の近くで打球する&垂直方向にスイングするには、“体の真横よりボール1つ前”くらいの位置で打球するのが最も適していると私は考えます。

注意してもらいたいのが、最後まで”下から上へ”の垂直スイングをする必要は無いということです。これをしてしまうと、スイングにつられて体が伸び上がってしまい体勢が崩れるので、ループを上手く返された場合に後手に回りやすくなります。WRMのぐっちぃさんのループドライブ解説動画で、最後まで垂直スイングをしているため、ぐっちぃさんの体が伸び上がってしまっています(オーバーにやっている部分もあるんでしょうが)。

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かといって、体が伸び上がらないようにスイングをセーブしてしまうと、回転量の低下に繋がってしまいます。どうすれば良いか・・・ヒントはティモボル選手の動画にありました。ティモボル選手のスイングは、打球前後は垂直スイングですが、スイングの最後は、肘を支点にワイパーのように半円を描いて顔の前までラケットを持ってくるような動きをしています。こうすることで、スイングの勢いは上方向ではなく右方向(左利きの場合)に逃げてくれるので、必要以上に体が上に引っ張られないで済み、次球も万全の体勢で攻めることが出来るんですね。

「垂直にスイングしたらループが高くなっちゃうよ!」という人は次のポイントを読んでください。

③膝を曲げて腰を落とし、低い打点で捉える

これは比較的理解しやすいのではないでしょうか。まず、あなたが既に回転量豊富なループを打てると仮定します。回転量を増やす為には薄く・速くインパクトする必要がありますが、本当に薄皮一枚で当てたような打球を思い通りのコースに打ち分けることは非常に難しい。また、球がネットを越えなかったり空振りしたり、というミスにも繋がります。よって、イメージ的には薄皮二枚程度で打球することが理想です。②で垂直方向にスイングした方が良いと書きましたが、真上にスイングすれば、当然、速い(=強い)インパクトであればあるほど球は上方向(=高く)に飛んでいく。つまり”高くて浅い”ループドライブになってしまいます。

よって、ネットスレスレになるような低いループを打つためには、インパクトを調整してループの高さを調整する or “ループドライブの始まり”である打球点を低くする、の2択ありません。

しかしインパクトを調整する、ということはつまり、インパクトを制限する(=弱く・遅くする)ということと同じですから、豊富な回転量を維持したままループを低くするには、膝をしっかり曲げて低い位置で球を捉えるしか方法は無い、ということです。

ここで注意してもらいたいのは、膝を曲げて腰を落として体勢を低くしたのは、ループドライブの開始地点を低くするためであり、一般的に「膝を曲げて腰を落として体勢を低くして下さい」と聞くと想像しがちな、下半身の力を利用して「体重移動をしっかり行い、球に威力を乗せるため」ではない、ということです。ティモボル選手の動画を見てもらうと良く分かるのですが、ループを打った後も体勢は低く膝も90°近く曲がったままで、回転をかけるためにフルスイングした腕に僅かに体が引っ張られている程度です。球を持ち上げる&回転をかけるのは上半身の力だけで良い、逆に下半身の力も使ってしまうと高いループドライブになってしまう、ということなんです。また、下半身も使ってループを打とうとすると、体が上下に動きますから、薄く捉えるための”球とラケットの距離”の微調整が難しくなってしまい、空振り・厚く当ててしまう、などのミスにも繋がります。

また、引きつけて低い位置で打球すると、頂点を過ぎて相手の球の”前に飛ぶ力”が弱くなるので、より浅く回転量の多いループが打ちやすくなる、というメリットもあります。

ループドライブを打ちやすい用具はあるのか

最後に、技術面だけでなく、用具面でもループドライブの質を上げることができないかを検討してみます。

ラバーは、薄く擦った時に回転が強くかかり、弾みすぎない物が適していると思われるので、粘着テンションラバーが最適でしょう。未テンションの粘着ラバーでは相手の下回転を打ち切るために求められるスイングスピードのレベルが非常に高くなってしまうので、あまり現実的ではないでしょう。実際にティモボル選手もテナジー05が開発されなければ紅双喜のディッパーという微粘着ラバーを使用する予定だった(もちろん当時はグルーOK)と聞いたことがあります。

ラケットに関しては、ループドライブが非常に薄く球を捉える技術であることから、しっかり薄く打球できた場合は、そこまで関係ないと思いますね。ですが、しなるor球持ちの良いラケットであった方が、少しくらい厚く当たってしまった場合でも回転をかけきることができると感じるので、私の感覚では板厚が6.0mm以下くらいが好ましいですかね。

そしてもう一つ重要なのが、ラケットのグリップ形状です。「ループドライブは球を薄く捉えることが重要である」と書いてきましたが、その薄く捉える感覚の微調整はラケット面の角度が作りやすいストレートグリップの方がやりやすいと感じます。フレアグリップも「腕・手首をしならせるために力を抜く際、小指が引っかかる為に安心して脱力できる」というメリットがあるのですが、面が固定されやすく、ループドライブのキモである”相手の球に応じた角度調整”がしづらいため、ストレートグリップの方がループドライブには適していると言えるでしょう。

以上のことを考えれば、ティモボルALC[ST]にテナジー05というティモボル選手の選択は、まさに大正解と言えるのではないでしょうか。

とは言っても、用具よりも↑に挙げた3つのポイントの方が遥かに重要ですよ!

ループドライブに悩んでいる人は、是非参考にしてみてください(´∀`)bグッ

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