タイムリーさには欠けますが、翔龍をなんだかんだトータルで半年以上使用してきたので、改めてこのラバーを徹底的にレビューしていこうと思います!
翔龍ってどんなラバー?
翔龍は2015年春にヤサカから発売された粘着テンションラバーです。
従来の粘着ラバーと言えば、回転は物凄くかかるんですが、硬い・重い・弾まないという大きなデメリットがあり使用者をかなり選ぶラバーでした。その傾向はスピンアートなどの粘着テンションやキョウヒョウNEOなどの已打底ラバーでも同じでした。
そんな状況の中発売された翔龍は、粘着とは思えない圧倒的な弾みで幅広いユーザーから支持されることになりました。カタログ値ではスピードは10+ですが、個人的には、強打時のスピード感はラクザX(スピード11)を上回ります。
トップ選手にも使用者が多く、女子の攻撃型選手ではキョウヒョウ系よりも使用者が多いと感じますね。
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ファーストインプレッション
まず硬さですが、粘着ラバーとしてはまあまあ軟らかいですが、硬度は47~52度ですから初心者向けではなく、「ある程度のインパクトをしっかり出せる選手にはピッタリ」という感じです。
ただこのラバーは重量の個体差が酷く、聞いた話も含めると特厚のカット前重量で7.8gの差があります。ラバーの重さは、ラバーの打球感に深く影響してきますから、実際に私が使った翔龍(全て特厚)は、普通→硬め→軟らかめ、という感じで打球感が結構違いました。なので、購入した際は重量の確認も重要だと思います。
粘着の質ですが、微粘着くらいで「弱くもないが強くもない」という感じです。キョウヒョウ3より少し弱いくらいです。輝龍は翔龍よりも粘着が強いですが、それでも”強粘着というには微妙”程度の粘着量でした。
ちなみに翔龍・輝龍は粘着の強弱をメンテナンスで調整しやすく、特に何もメンテナンスをしなければ微々粘着くらいまで落とせますし、粘着保護シートなどを使用してしっかりケアをすれば強粘着まで育ってくれます。
↓ラバーケアの参考記事はコチラ↓
実際に打ってみると・・・
結果から言うと、「悪くないけど、誰が使っても満足する系統のラバーではない、あと粘着ユーザーの救世主にはならないかも」という感じ。
詳しく書いていきます。
ドライブ系
まずこのラバーの最大の特徴である弾みなんですが、未打底の粘着ラバーの中ではかなり上位に入るでしょう。しっかり打てば最近のテンションラバーと同じ感覚で打っても入ってくれます。
当然テンションの方が平均速度・飛距離・飛ばしやすさは優れているんですが、前・中陣では
飛距離が無くて困る・・・(-ω-`;)ゞ
というのは従来の粘着ラバーと比べるとほぼ無いです。
後陣までいくと飛ばし方を工夫しないと飛距離・スピードが足りず浅く入りがちになるので、上手い人からは狙われるでしょうね。まあ、擦り打ちでも従来の粘着ラバーよりは弾んでくれるので、粘着ユーザーにありがちな、”下げられると苦しい”という展開は緩和されますね。
これだけ弾みがテンションラバーに近づくと、粘着ラバーらしいクセ球が出づらくなるのでは、と思いきや、しっかりクセ球も出ます!
テンションより浅めに台について、そこから上にホップするような弾道になるので、受け手側はラケットの角に当ててしまうようなミスが多かったです。
あと、球が重い。
普通に打ってもしっかりインパクトすると重い球が出ますが、面を開いてぶつけるように平行スイングする「粘着打ち」をすると、明らかに球質が変わって、ひじょーに重たい。しかも弾みが従来の粘着ラバーより断然あるので、前・中陣ではテンションラバー以上の質の高い決め球が出せます。また、打ち方によって球質を使い分けるのも、相手は相当嫌がるでしょうね。
もちろん良いことばかりではなくて、擦ったドライブは“回転量がスピン系テンションと同じくらいでスピードは遅い”という感じで中途半端な印象です。従来の粘着と比べて回転量が少なく球離れも速いですから、強烈ループを多用するような、遅さ・回転量を重視する人には適さないかもしれないですね。
女子選手は男子のようにバカスカドライブを打つというよりは小さなドライブが多くなると思いますが、その時、早いピッチで攻めることに重点を置く人はスピン系テンションの方が、当たり前ですがラクに良い球が出ます。ただ、翔龍もテンションに近い速さがありますから、しっかり早いピッチの中でも振れる人が「もう片面のラバーとの球質の差を出したい」というならアリです。
さらにさらに、やはり粘着ラバーらしさを捨てていないこともあり、従来の粘着ラバーのように、インパクトが弱いと回転がかからない・遅い・ミスしやすい、という特徴があります。これらの理由から、初心者には薦めづらいですね~。
ミート系
インパクトが弱いと従来の粘着ラバーよろしく飛距離が出ません。
なので、特にブロック系の技術にはテクニックが求められると思います。
テクニックがある人が使うと、ナックル・止める・伸ばす・曲げる、という細工がしやすいので相手を翻弄できます(ただし前陣に限る←)。
バック面で使ってみようと思った時期もあるんですが、この「インパクトが弱いと飛距離がでない」という特徴のおかげで断念しました。不意にバックへ球が来た時や、ピッチが速くてしっかりバックでスイングが取れない時って、自分レベルだとインパクトがかなり弱くなってしまうんですが、こういった時に全然ネットを越えてくれないんですよね・・・。しっかり食い込ませるor引っ掛けて、しっかり自分から弧線を作る必要があります。
初・中級テンションユーザーにありがちな“ラバーの性能に頼った打法”をすると、トコトンこのラバーはダメですね。
腐っても粘着、翔龍はそんな甘いこと許しません(`ω´メ)←
フリックは、やりづらいことはないですが、ラバーがそもそも少し硬い、球離れが速い、という点で好みがはっきり別れる印象です。翔龍でフリックがやりづらいと感じる場合は、輝龍を使ってみると良いかもしれません。
打球感がマイルドになって、だいぶやりやすく感じるはずです。
スマッシュですが、個人的にはかなーり好感触です!
インパクトが弱いと、↑の特徴が出て、ボトっと落ちます。インパクトが強いと飛距離のポテンシャルがあるんで、スコーンと抜けるような良い球が出ます。しかもドナックル。
私は試合中よくスマッシュを使うので、スマッシュのやりやすさ・質などにはこだわるんですが、普通のテンションラバーは厚ければ厚いほど勝手に前進回転がかかって、相手は”ラケットに当たりさえすれば返せる”という感じのスマッシュになりがちなんですが、翔龍は見事なまでにドナックル。ネットにかかります。しかも速いんで、エース率は高いです。
打球感に関しては、かなり好みが別れるでしょうね。やや硬めのテンションラバーに、粘着ラバー独特の”ビバンッ!!”という変な打球感が混ざった感じです。また、スマッシュくらいインパクトが強くなると、スポンジに食い込んで球持ちも若干生まれます。
この感覚、個人的にはコントロールもしやすくスピードも出てくれるので好きです・・・w
台上技術
ツッツキは結構切れますが、軟らかさと球離れの良さが影響して、ブチ切れという感じではなく、粘着ラバーとして見ると及第点といった感じ。逆に回転の影響には鈍感になっているので、レシーブ自体はかなりしやすいラバーですね。
ストップはあと一歩って感じです。
結構テンションに寄っているラバーなので、粘着ラバーとして見ると球離れが早くポンと飛び出しやすく、ビタ止まりはしないです。止まりはするんですけど、粘着のあの恐ろしいくらいの止まり方を知っていると・・・ねぇ?←
今までテンションを使ってた人からすれば「止めやすい!」って感じですが、台上がよろしい粘着・粘着テンションを使ってた人からすると「惜しい・・・でも、まあ全体的に弾むし仕方ないか・・・」って感じです。
サーブ
個人的には、やりやすいと思います。
一応粘着ですからショートサーブはテンションよりも出しやすいですし、スピード感があるのでロングサーブも及第点レベル。ですが、正直、スピード重視のロングサーブよりは回転をかけるロングサーブの方が好感触です。キュッと引っかかるので調整もしやすい。
あと粘着を利用したナックルサーブのナックル具合が、テンションより1段階上でよろしい。ナックルを混ぜた回転量の落差を重視するプレーヤーにはオススメです。
まとめ
個人的には粘着の特性が欲しいテンションユーザーにはピッタリです。まさに待望のラバーではないかと!
逆に、粘着ユーザーからすると、
回転量や台上技術が微妙で粘着の良さが薄れて中途半端だ(`Д´)
という評価になってしまうのかな~と。やはり粘着の良さを残したまま弾みを上げるのはなかなか難しいんでしょうね。
扱いづらさ・硬さがあるので初級者にも、そこまでオススメする感じではないです。粘着ラバーの「しっかり打たないと、テンションよりミスが増える」という特徴が残っているので、基本はできている中級者以上の方が、より良さを実感できると思います。
あと、中・後陣からは厳しいというか普通の人であればテンションの方が楽に良い球が出るので、よく下がるような人にもオススメしません。これを中・後陣でもしっかり使える人は、より台上とかサーブレシーブを重視してNEOキョウヒョウとか使うだろうから、成人男子のトップ選手はあまり使わないんだろうと予想。
女子のトップ選手で流行っている理由を分析してみると、
・重量が軽め(特厚でカット後46.7g)
・速いピッチでも、ある程度振れればテンションと同じ感覚で入る(NEOキョウヒョウとかになるとスイングの強さが結構求められる)
・選手間の口コミ効果(スワットも同じような傾向があったと思います)
ということが挙げられるのでは。
これに加えて、前・中陣ではテンションにも負けないスピード性能、テンションに比べて台上・サーブなどがやりやすい、粘着らしい球質の球が出る、などの特徴から、多くのテンションユーザーが乗り換えているんではないかと。
ラケットとの相性
ラバーの硬さ・球離れの良さを考慮したラケット選びが重要になってくると思いますね。
硬めで板厚の7枚合板だと、非常にパワフルな球が出せますが、そもそもの扱いづらさが目立ってしまう印象でした。フォルティウスFTくらいが限界だと思いますが、これでも標準成人男子以上のインパクトが求められる感じがします。やはり弱いインパクトだと翔龍の場合ミスに繋がりますね。
また、アウターの特殊素材ラケットの場合、球離れが速さが影響して、球が少し軽くなってしまう感じはしますね。下回転も持ち上げづらくなります。ただ特殊素材で後押しされた翔龍のドライブは非常に速い&うねるので、扱いこなせれば武器になるとは思います!ガチガチのカーボン単体よりかは、アリレートカーボンなどの扱いやすい特殊素材が良いでしょう。ティモボルALCとかね。
最後に
いかがだったでしょうか。
ちなみに輝龍は、翔龍よりも更に一段階テンション寄りのラバーなので、扱いやすくなっていますがクセ球はあまり出ませんね。「クセがだいぶ減ってマイルドな打球感になった翔龍」をイメージしてもらえれば良いと思います。「軽くて弾むようになった翔龍」みたいなイメージをしている人が使うと肩透かしを食らいます。重量も軽いですし台上のやりやすさは残っているので、こちらは初級者にもオススメです。
弾みが欲しい粘着ユーザーは、もしかしたら想像と違う感じかもしれませんが、テンションユーザーで粘着の特徴を出していきたいと考えている人には、翔龍、かなりオススメです!!
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